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戦前戦後2つの未成線が交錯、全国でも珍しい廃線区間、広浜鉄道・今福線ツアーに参加

産業遺産の見学ツアーをいろいろ企画・運営しているJ-Heritageの前畑さんにお誘いいただき「広浜鉄道・今福線ツアー」に参加しました。12月3、4日の一泊ツアーでした。

行き先は島根県浜田市、今回のどのあたりが産業遺産かといいますと、この「広浜鉄道」、広島と浜田を結ぶ鉄道として計画されたものの、工事中止となって、そのまま廃線となった「幻の鉄道」なんですよ。しかも、戦中と戦後、新旧2つの未成線が残る、日本でもかなり珍しい(唯一か?)廃線跡です。

浜田市は観光振興の一環で、この広浜鉄道・今福線を活用したいとお考えで、ツアーの企画・運営をJ-Heritageさんに依頼し、今回のツアーと相成ったわけです。1泊2日のツアーで、未成線の遺構を見学して回るのですが、今回は浜田市の観光課の方も一緒に回り、普段は見学できない場所も、ばっちり見学・散策・撮影できました。

廃線・未成線は僕が追っているメインジャンルではないのですが、未成線の遺構というのは、その成り立ちの興味深いし、何よりも切ない雰囲気がたまらないわけで、今回は喜び勇んで参加しました。

広浜鉄道・今福線の未成線は、新旧2つあり、古いほう(旧線)は、山陰本線の下府(しもこう)駅から浜田市の今福まで、新しいほう(新線)は、浜田駅からやはり今福までの区間を鉄路で結ぶものでした。

いずれも事業主体は国(戦後は国鉄)であり、旧線は昭和8年着工、昭和15年に太平洋戦争の影響などで中止、戦後は昭和44年から新ルートによって工事を着工したものの、国鉄の赤字拡大が原因となって昭和55年に工事中止となりました。

仮に路線が全線開通すれば、広島県にある可部線の三段峡駅に繋がる予定でしたが、この可部線自体が、平成15年に可部〜三段峡間の営業を中止しており、残念ながら今後も鉄路が繋がる可能性はほぼないようです。

中国地方の山陽と山陰を結ぶ「陰陽ルート」は、意外と発展が遅く、因美線、伯備線、木次線、三江線、山口線などいずれも単線で、電化されているのは伯備線のみという、恐ろしくローカルな路線です。

このうち広浜鉄道に近い三江線は廃線に向けて準備が進んでいます。特急が走る伯備線や蒸気機関車D57の運行で観光地化している山口線はまずは安泰ですが、因美線、木次線あたりがちょっと心配。乗れるうちに乗っておきたい路線ではあります。

それはさておき、今回じっくりと味わってきた広浜鉄道・今福線の写真をツアーで回った順でご紹介していきます。

12月3日、ツアー初日のハイライトが、この橋梁群。
戦前に工事が行われた旧線の遺構です。下府川という川沿いを上流に向かって進むルートです。狭い渓谷をあっちこっちトンネルを掘り進め、時には橋梁で川を渡るといった具合にルートが取られていたようです。

現在は川沿いに県道50号線が通っているので、トンネルや橋梁の遺構が道沿いに次々と現れて、バスの車窓から目を離せない状態でした。できれば自転車で巡ってみたい区間です。

こちらは今福線で唯一の5連アーチ橋だった箇所。見ての通り、現在は上の県道が走っています。

足元から見上げた図。結構でかい。写真に写っているのは人物は今福線のガイドをなさっている石本恒夫さん。なんと現在88歳! とても80代とは思えない元気なガイドさんでして、ツアー参加者と一緒になって、山を登ったりトンネルに入ったり廃線を歩いたりと、すごいバイタリティーでした。こんなところで、島根の底力を見たような気がします。

こちらは4連アーチ橋。ここに限らず、どの遺構も下草を刈ったり、格好のビューポイントでは立木を伐採して見易さを確保したりと、地元の皆さんや自治体の方のご尽力を感じることが多かったです。言ってしまえば「ウェルカムムード」なんですよ。こんな廃線跡、あんまりないですよ。

今回の今福線ツアーに関係する方だけでなく、ちょっと話しかけた地元の人でも、今福線のことをよくご存知で、僕らみたいな余所者にも気安く接してもらえるので、廃線ファンも割と気軽に訪問できるような気がしました。

ちょっとわかりにくいけど、画面の両端に2本の橋が写ってます。
左が昭和初期の4連アーチで、右が平成にできた高速道路、浜田道の橋げた。
浜田市は浜田道を使っても広島から2時間かかる距離。遠いなあ。

12月4日は新線の見どころ、旧線の「おろち泣き橋」なる奇橋、そして新線と旧線、未成線だった2本の路線が交差するという、大変珍しいポイントを見学して回りました。あいにくの雨でしたが、参加者が全員マニアなので、これしきの雨でへこたれる人はいませんでした。すごいなほんと。

新線の橋梁跡。昭和40〜50年代のものなので、さすがによくできてます。古臭い感じはなくて、今でも列車が走ってきそうな雰囲気。

トンネルもしっかりしている。今回は特別な許可をもらっているので、トンネル内を散策したり、橋梁を歩いたりできました。列車が走っていれば、きっとこんな風景が見られたにちがいない、そんなふうな思いながら、テクテクと未成線を歩きました。

県道沿いにぽっと残った今福橋梁の遺構。
こういうのすごい興奮するよね! 道端にあったら絶対クルマ止めて見てしまうヤツ。

こちらは旧線側の遺構で、その名も「おろち泣き橋」と名付けられた4連アーチ橋。調査した人が名付けたヤツね。実際に橋梁の下を歩いてみるとわかるんだけど、下の流れる川の流れの音が、あるポイントだけ異様に大きくなるという不思議現象が体験できます。アーチの形状によって音の反響が変わったせいで発生するようです。

ともあれ、わずか一歩の違いで音が大きく変わるので、異様な感覚を味わえます。絶対子供が喜ぶはずなんだが、足場が悪いので万人向けの見学スポットでないのが残念。
そして、今回最大の見どころはこちら。

新線と旧線の2つの橋梁が並んでいるポイントです。

大変美しい旧線のアーチ橋を新線から眺めるという、まさに感無量といったスポットです。
ここは、残念ながら普段は見学ができないスポットで、今回のようなツアーの際に開放されて、見学・散策が可能になっているようです。したがって、こちらに掲載した写真は特別に許可をもらって撮影したものとなります。

旧線側から見た新線。トンネルを越えてさらに進むと、今福線の終点となるはずだった今福駅に向かいます。

大変充実した今福線ツアーでした。浜田市の皆さんに暖かく迎えていただき、またツアー参加者も濃い廃モノファンが多かったので、2日間があっという間に過ぎてしまいました。

なおツアーでは、今福線以外にも浜田市の観光名所である石見畳ヶ浦、また廃校となった旧有福小学校・中学校、旧木田小学校、そして美又温泉なども巡りました。今回は1泊2日のお泊まりツアーだったので、夜には懇親会もあって、これもよかったです。やっぱり同じ趣味の人間が集まると、話も濃いですし、久しぶりに仕事のことを忘れて楽しい夜を過ごしました。

そんなわけで今福線、しっかりと遺構が残る珍しい未成線の廃線ですのでオススメです。
今後も、市役所や地域がうまく連携して、円滑にツアーができる仕組みができることを願ってます。

関連URL
広浜鉄道今福線(浜田市のホームページ)
http://www.city.hamada.shimane.jp/www/contents/1441781919538/index.html
島根県技術士会
http://peshimane.net/category/imafuku-line

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