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ある風景について、古い写真と新しい写真を並べて、違っているところ同じところを確かめる、といったパネル展示や雑誌の記事をよく見かけます。こうした記事を作るには、その風景の過去の写真をどうにか見つけてくる必要がありますよね。これはなかなか大変なことです。
そこで思いついたのが、戦前の写真絵はがきです。今みたいに携帯電話で写真が撮れたり送れたりする前は、旅先で絵はがきを送るということをよくやっていました。特に戦前には、絵はがきは一大ブームとなり、人々はことあるごとに絵はがきを送りあったようです。
明治に郵便の仕組みが登場し、ほぼ同じくして写真技術の発達も見られたことから、郵便と写真、この二つのニューメディアが爆発的なブームとなって、大正・昭和初期には膨大な量の絵はがきが作られました。これらの絵はがきは古本屋さんや骨董品店で手軽に入手可能です。
これらの絵はがきを使えば、古い写真と新しい写真、両方を見比べるという楽しみ方が手軽にできる、というのが、この本のコンセプトであり、「絵はがき写真旅」ということになります。絵はがき自体は、すでに10年ほど前から収集を始めていたのですが、実際に絵はがきに写った場所に出向いて、同じ位置から写真を撮ってみる、という「実地調査」は昨年になって始めたばかりです。
この本には実際に訪問した8箇所についての写真と旅エッセイを収録しました。絵はがきの来歴を調べていると、戦前の軍事秘密に遭遇したり、歌舞伎の有名な演目の「聖地巡礼」だったり、何かと面白いエピソードが出てきました。
古きを訪ねるための新しい旅のスタイルとして「絵はがき写真旅」を提案したいと思います。誰でも手軽に始められますのでお勧めです。なお、この本を作った後も、毎月1箇所のペースで絵はがき写真旅を実施しています。またネタが溜まったら続編を作りたいです。
最後に、絵はがき写真旅の例として、本書でも紹介した山口県下関市の関門海峡をご紹介しましょう。
まずは戦前の絵はがきの紹介です。
僕のコレクションにあった珍しいカラーの写真絵はがきです。
関門海峡の絵はがきですが、この時点でちょっと変です。海峡ですから、実際には対岸が写ってないといけないのに、絵はがきに写っているのは水平線です。 では現在の関門海峡の写真と重ねてみましょう。
ちょっと絵はがきを細工して、半透明にしてみましょう。
だいたい位置があってますよね。
ハイ、これが現在の同じ場所です。
ちゃんと対岸が写ってますね。絵はがきに写ってなかったのに。
なお、写真の中央に写っている灯台のようなものは「導灯」といって、海峡のような狭いところに設置されている灯台の一種です。これは現役なんですね。
さて、どうして絵はがきに対岸の陸地が写っていなかったかというと、絵はがきの写真が加工されているからです。陸地を消して大海原にしちゃってるんですね。戦前のPhotosho職人の技です(笑)なんでそんなことをしたかというと、この絵はがきが太平洋戦争直前に発行されたもので、日本軍の検閲を受けているからなんですね。
戦前の下関は要塞地帯で、自由な撮影は禁止されていました。この絵はがきは昭和11年5月に下関要塞司令部の検閲を受けています。軍事的な要衝だったわけですね。
他にも面白い発見があります。絵はがきの右端に写っている木造家屋なんですが、80年近く経った現在もそのままの形で残ってます。これは現地に行って驚きました。意外と建物って残るもんなんですね。
繪はがき寫眞旅
2014年12月28日刊行
価格:500円 B5判・16ページオールカラー
在庫あり
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